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鈴木優人「深き淵より」

MASATO SUZUKI  鈴木優人
“De profundis Clamavi”  深き淵より

【編成】
混声合唱(無伴奏・アカペラ)

初演 2010年9月11日 ミューザ川崎シンフォニーホール(神奈川県川崎市)
 ※東京ムジーククライスによる委嘱初演作品、演奏時間約10分

【初演時プログラムより、作者執筆の解説】

アカペラ混声合唱のための「深き淵より」は、東京ムジーククライスの委嘱により本日の演奏会のために書かれた。歌詞は旧約聖書詩編第130編(七十人訳聖書とそれに基づくウルガタ訳ラテン語では第129編)の本文全文であり、日本語とラテン語が交互に歌われる。

ラテン語の「De profundis clamavi」という語り出しでも有名なこの詩編は、「呼び求め」「赦し」「望み」「贖い」の4つの要素で構成されている。日本語のセクションは後述するジュネーヴ詩編歌に基づいており、詩編歌に基づいた楽曲を数多く遺したクロード・グディメルへのオマージュである。一方ウルガタ訳ラテン語のテクストに基づく部分は、4節の日本語のセクションの前後に配置されている。長くカトリック教会で用いられたラテン語の公的な性格に影響を受けつつ、自由な音楽要素を持つ。

ジュネーヴ詩編歌は、1539年以降ジャン・カルヴァンによってジュネーヴで順次発表された。文字通り詩編を歌うための旋律であり、1562年に詩編150編全てが刊行された。現在でもその流れを汲む改革派教会において歌われている。どの旋律においても、終止音を除く全ての音が二つの音価(すなわち二分音符と四分音符)のみで構成され、それと相反して旋律の高低には多彩な抑揚が付けられているのが特徴である。また各行末には休符が置かれ、明確に区切られている。ルイ・ブルジョワ、テオドール・ベーズなどの作曲家によって作曲されたこれらの旋律は、その旋法の美しさと構造のシンプルさゆえに、さまざまな展開が可能であり、スウェーリンクやグディメル、メンデルスゾーン、コダーイなど多くの作曲家によって曲が書かれた。インプロヴィゼーションの素材としても多く用いられる。

ジュネーヴ詩編歌130編の旋律はドリア旋法にもとづく8行の旋律であり、1555年に発表された。旋律の作曲者は不明である。原詩はフランス語であり、日本語訳は1988年に日本キリスト改革派教会によって翻訳されたものを用いた。