東京ムジーククライス第10回定期演奏会に寄せて vol.2

松井亜希<ソプラノ>より

matsui_akiメサイアの2部の最後のコーラス「ハレルヤ」。

あまりにも有名なこの曲ですが、私は中学1年の時に全校合唱で歌ったのが初めてでした。英語の授業も始まったばかりで不慣れな英語に格闘した記憶があります。後にこの曲が演奏時間3時間の大作「メサイア」の中の1曲だと知りました。

私が初めて歌ったクラシックの曲がハレルヤだったので、この作品を演奏する時、いつも初心に帰るような、初々しい気持ちになります。

今回はドイツ語で演奏しますが、英語のオリジナルとは違った響きや表現が新鮮で、メサイアをよくご存知の方も愉しんでいただけると思います。

東京ムジーククライス第10回定期演奏会に寄せて vol.1

渡辺祐介<指揮/常任指揮者>より

watanabe_yusuke学生の頃から今に至るまで、バッハの教会カンタータや受難曲等と並んで、ヘンデルの《メサイア》を演奏する機会が多い僕ですが、演奏するたびに思うのは、バッハの音楽が「脳の中を何度も周回してから、体中に染み渡るように迫って来る感動」なのに対して、ヘンデルの、特に《メサイア》は「脊髄反射的に興奮させられる音楽である」ということです。

こう書いてしまうと、いかにもヘンデルの作品の方が底が浅いように思えてしまうかもしれませんが、決してそういうことではなく、バッハにも劣らぬ教養と才能を持ったヘンデルが (それどころか、当時はヘンデルは全ヨーロッパ的な名声を勝ち得ていたわけです)、わざとそのように書いていたということで、それを裏打ちする “音楽的な懐の深さ”があったればこそ、今日に至るまでこの作品は世界中で愛好されているのだと思います。そもそも、刹那的な興奮しか得られぬ作品が、長く残るはずがないのです。

モーツァルトはそのヘンデルを非常に尊敬し、《メサイア》を含めてヘンデルの4つの声楽曲の編曲版を残しています。バッハにも相当な尊敬の念を持っていたようですが、モーツァルトにとってヘンデルの方が、遥かに他人とは思えぬ存在であったのでしょう。恐らく、自分の作品とは作風は違えど、そこに通暁するものは「脊髄反射的興奮」であったからに違いありません。モーツァルトの作品も、頭で延々考え尽くされた後にやっと音符になったものではなく、瞬間的で強烈なインスピレーションに基づいてはいるが、しかし完璧なフォルムで生まれでたものに、僕には思えます。

今回演奏するモーツァルト編曲の《メサイア》は、僕に言わせれば、「出会うべくして出会った」音楽史上最高の才能に恵まれた二人による、奇跡のコラボレーションだと言えます。

《メサイア》の編曲版は他にもたくさん存在しますが、モーツァルトのそれは、ヘンデルの大作に対してガチガチに構えて対峙しているという ものではなく、あたかも過去の自分の作品に接するように、その中を本当に自由に泳ぎ回り、モーツァルト一流の魔法をかけて回っているかのようです。

ベートーヴェンは「バッハはBach (小川) ではなく、Meer (大海) である」という名言を残していますが、モーツァルトにとっての “Meer” は他 ならぬヘンデルであったに違いありません。

ともかく無類に面白い作品です。是非聴きにいらしてください!

第10回定期演奏会オーケストラメンバー

第10回定期演奏会オーケストラメンバーです。在京、東京近郊のプロオーケストラの
首席クラスの方々をはじめ、素晴らしいプレイヤーの皆様にお集まりいただきました!

フルート
三枝朝子、鶴田洋子

オーボエ
工藤亜紀子、高橋舞

クラリネット
川井夏香、芹澤美帆

ファゴット
鈴木禎、長谷川太郎

トランペット
斎藤秀範、野田亮

ホルン
萩原顕彰、古江仁美

トロンボーン
上田智美、大馬直人、村本悠里亜

ティンパニ
井手上達

ヴァイオリン1
清岡優子☆、廣海史帆、藤崎美乃、前田奈緒
山本有紗、崔樹瑛 、真野謡子、河野由里恵

ヴァイオリン2
村津瑠紀、本郷幸子、小杉結、鈴木由美
福井彩花、岡田紗弓、平野悦子、増村寿乃

ヴィオラ
成田寛、渡部安見子、三好紅
桜井亮子、中田美穂、春木英恵

チェロ
山本徹、西澤央子、野津真亮、土師晋太郎

コントラバス
西澤誠治、平塚拓未、布施砂丘彦

フォルテピアノ
重岡麻衣

☆…コンサート・ミストレス

※演奏曲目、並びに出演者は、やむを得ない事情により変更になる場合がございます。
予めご承知おきください。

【ご案内】東京ムジーククライス第10回定期演奏会

本公演では、結成10周年を記念し、《メサイア》(モーツァルト編曲版)KV572を演奏致します。
ウィーンの音楽愛好家貴族ゴットフリート・ヴァン・スヴィーテン男爵から《メサイア》の編曲
依頼を受けたモーツァルトは、バロック様式にて作曲された偉大な原曲への敬意を払いながら、
18世紀後半の音楽趣向を取り入れ、後世に残る偉大な編曲版を生み出しました。普段聴き慣れた
《メサイア》とは一味違う編曲版を是非お楽しみください。

【東京ムジーククライス 第10回定期演奏会】

2016年9月11日(日)12:30開場 13:00開演

東京オペラシティコンサートホール タケミツメモリアル
⦅京王新線(都営地下鉄新宿線乗り入れ) 初台駅東口下車 徒歩5分以内⦆

全席自由2,000円

チケットぴあイープラスカンフェティ、東京オペラシティチケットセンターにて
2016年4月8日(金)より発売開始

【演奏曲目】
ゲオルグ・フリードリヒ・ヘンデル作曲/ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト編曲
オラトリオ《メサイア》 KV572

【出演者】
渡辺祐介(指揮)
松井亜希(ソプラノ)
布施奈緒子(アルト)
藤井雄介(テノール)
加藤宏隆(バス)
東京ムジーククライス(合唱/管弦楽)※出演者プロフィール

※演奏曲目、並びに出演者は、やむを得ない事情により変更になる場合がございます。
予めご承知おきください。

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【出演者プロフィール】東京ムジーククライス第10回定期演奏会

渡辺祐介<指揮/常任指揮者>

watanabe_yusuke東京藝術大学音楽学部卒業、同大学院修了。多田羅迪夫氏に師事。その後2008年より2010年までオランダのデン・ハーグ王立音楽院に留学、ペーター・コーイ、マイケル・チャンス、ジル・フェルドマン、リタ・ダムス諸氏のもとで研鑽を積んだ。その間2009年9月にオランダのエンスヘーデで行われたサッカー日本代表とオランダ代表の親善試合では、特に指名されて国家《君が代》を独唱した。 帰国後は、2013年1月に世界初演された三枝成彰氏の新作オペラ《KAMIKAZE》に特攻隊員役で出演、金昌国氏指揮 のアンサンブル of トウキョウによるベートーヴェン《交響曲第9番》にソリストとして招聘され、また栗山文昭氏指揮の栗友会合唱団の公演ヘンデル《メサイア》、フォーレ《レクイエム》にソリストとして招かれる等、活躍の場を拡げる。 2002年4月より鈴木雅明氏の主宰するバッハ・ コレギウム・ジャパンのメンバー。 現在東京ムジーククライス常任指揮者、マヨラ・カナームス東京音楽監督。古楽アンサンブル「ロゴス・アポカルプスィス」主宰、Gamut Bach Ensamble、Coro Libero Classico各メンバー。 2014年4月より、東北学院大学非常勤講師。

松井亜希<ソプラノ>

matsui_aki岩手県出身。岩手県立不来方高等学校、東京芸術大学音楽学部声楽科卒業、同大学院修士課程・博士(後期)課程を修了し、音楽博士の学位を取得。在学中アカンサス音楽賞、同声会賞、三菱地所賞を受賞。日仏声楽コンクール優勝、友愛ドイツリートコンクール優勝・文部科学大臣奨励賞・日本R.シュトラウス協会賞受賞、日本音楽コンクール(歌曲部門)入選。東京室内歌劇場のバロックオペラ《ラ・カリスト》でオペラデビュー。オラトリオのソリストとして《メサイア》、《マタイ受難曲》、《第九》等様々な作品に出演。世界で活躍するバッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)の国内外の公演や録音に参加しており、ドイツのラインガウ音楽祭・ブレーメン音楽祭では《マタイ受難曲》、《マニフィカト》のソリストを務めた他、急遽代役を務めたスペインのカナリア諸島音楽祭および新国立劇場での《ポッペアの戴冠》では絶賛された。また、東京オペラシティ財団主催のソロリサイタル「B→Cバッハからコンテンポラリーへ」では、バッハやパーセルのバロック作品と20世紀のイギリス・アメリカの歌曲作品、新作を含む現代作品を演奏し、透明感ある歌声と豊かな表現で聴衆を魅了した。NHK-BS「クラシック倶楽部」、NHK-FM「リサイタル・ノヴァ」出演。東京ムジーククライス、コーラル・アーツ・ソサイアティ・ヴォイストレーナー。

布施奈緒子<アルト>

fuse_naoko東京藝術大学音楽学部声楽科卒業。卒業時にアカンサス音楽賞および同声会賞受賞。同大学大学院音楽研究科修士課程修了。声楽を野本立人、故 大國和子、多田羅廸夫、寺谷千枝子の各氏に師事。 これまでにオペラでは、モンテヴェルディ《ポッペアの戴冠》(乳母・アモーレ)、ビゼー《カルメン》(メルセデス)、マスネ《ウェルテル》(シャルロッテ)等を演じる他、バッハ《ヨハネ受難曲》、ヘンデル《メサイア》、ベートーヴェン《交響曲第九番》、メンデルスゾーン≪エリア≫、ヴェルディ《レクイエム》、ドヴォルザーク《レクイエム》等コンサートソリストとしても多くの演奏会に出演。 バッハ・コレギウム・ジャパン(音楽監督:鈴木雅明)のメンバーとして国内外の公演・録音に参加しており、メンデルスゾーン《パウルス》公演ではソリストを務める。 現在、声楽家として演奏活動を行うと同時に、学生・一般を問わず複数の合唱団でボイストレーニングや指導に携わっており、東京ムジーククライスではアルトボイストレーナーを務めている。

藤井雄介<テノール>

fujii_yusuke14歳より声楽を始める。外川香奈子、オルガ・ワルラ=コロ、奥田誠、枝川一也、鈴木寛一、寺谷千枝子、ブライアン・パーソンズの各氏に師事。 これまでに、バッハ《ヨハネ受難曲》の福音史家、ヘンデル《メサイア》、ハイドン《天地創造》、モーツァルト《レクイエム》、ベートーベン《交響曲第9番》、シューマン《薔薇の巡礼》など、主に宗教的声楽作品のソリストを多数務める。 故佐藤功太郎、小林研一郎、広上淳一、現田茂夫、ロルフ・ベック等の指揮者のもと、日本フィルハーモニー交響楽団、神奈川フィルハーモニー管弦楽団、オーケストラ・アンサンブル・金沢等と共演。 バッハ・コレギウム・ジャパン(鈴木雅明音楽監督)ではソリストおよび声楽メンバーとして国内外における多数公演・録音に参加している。 2009年5月には新国立劇場コンサート・オペラ、モンテヴェルディ《ポッペアの戴冠》にルカーノ役等で出演。2015年2月にはアメリカ・フィラデルフィア・メンデルスゾーン・クラブによるバッハ《マタイ受難曲》(メンデルスゾーン編曲版)公演に福音史家として出演した。 広島大学教育学部音楽科卒業後、東京藝術大学音楽学部声楽科を経て、同大学院音楽研究科修士課程および博士後期課程修了。現在、東京藝術大学音楽学部附属音楽高等学校非常勤講師。

加藤宏隆<バス>

kato_hirotaka静岡県出身。高校在学中より声楽の勉強を始める。東京藝術大学音楽学部声楽科卒業。第5回浜松市民オペラ《魔笛》パパゲーノ役でオペラデビューし、その後渡米。ジョンズ・ホプキンス大学ピーボディ音楽院にて修士課程を、インディアナ大学ジェイコブス音楽院にてディプロマ課程をそれぞれ修了。ジョン・シャーリー=カーク、ベニータ・ヴァレンテ、ケヴィン・ランガン、ヴィンソン・コール、キャロル・ヴァネス、アンドレアス・プリメノス等、世界的な演奏家諸氏のもと研鑽を積んだ。イタリア・フィレンツェへの短期留学も経験する。アメリカ国内にて、アスペン音楽祭をはじめ、多くのオペラやコンサートにソリストとして出演。2010年帰国。現在は東京を拠点に、オペラでは静岡県民オペラ《夕鶴》、東京・春・音楽祭《ファルスタッフ》、東京二期会《ドン・カルロ》《魔笛》、日生劇場《アイナダマール》、第7回浜松市民オペラ《ブラック・ジャック》(宮川彬良作曲・世界初演)等、出演多数。オペラ以外にも、バッハ・コレギウム・ジャパン合唱メンバーとして、演奏会やレコーディングに参加するなど、宗教音楽の分野でも活躍。二期会会員。早稲田中学高等学校非常勤講師。本年11月、日生劇場《後宮からの逃走》オスミン役として出演予定。

東京ムジーククライス<合唱/管弦楽>

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2006年10月、首都東京を本拠地とし、バロックや古典・ロマン派の宗教曲、とりわけJ.S.バッハの作品の研究、及びその演奏活動を目的に設立された合唱団、音楽団体。常任指揮者には、バッハ・コレギウム・ジャパン等で広く活躍中の渡辺祐介氏を迎え、また国内外で活躍する気鋭の音楽家を数多く指導者・演奏者として招聘し、併設のプロオーケストラと共に演奏活動を行っている。20代・30代の若手社会人や学生を中核として集った、濁りなく機動性溢れる合唱アンサンブルは、楽器としての“声”の迫力、美しさや豊潤さを新たに感じさせるものとして評価を得ており、その活動スタイル、また意欲的なプログラミングとも相俟って各方面から注目を集めている。

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