東京ムジーククライス第10回定期演奏会に寄せて vol.6
山本徹<チェロ>より
学生の頃、バッハのチェロ組曲をレッスンに持っていった時、師曰く「何回本番で弾いたか数えておくといいよ…僕はもう手遅れだけど!」。ものぐさな弟子は師の教えを活かさず、どうやら既に手遅れになってしまったが、メサイアもまた同じく、何回弾いたか分からない曲の一つになりつつある。
通奏低音奏者にとって仕事の事始めのようなこのメサイア、最初はひたすら長い曲と思っていたが、徐々にヘンデルの素晴らしさと、背後に散りばめられたレトリックの数々に気付くようになり、毎回新鮮な驚きと共に本番を迎えている。もう一人の天才モーツァルトもやはりこの曲に出会うべくして出会ったのではないだろうか?
私にとっておそらく27回目のメサイア(そして2回目のモーツァルト編)、創立当初よりご一緒させていただいている東京ムジーククライスの節目の年に皆様と、そして盟友渡辺祐介氏をはじめ素晴らしい同僚の皆様とご一緒出来る事を大変嬉しく思う。